農薬使用量の10%が、農地全体の1%にすぎない綿花栽培に
今日、参加したイベントでのこと。
アウトドアウェアブランドのpatagonia(パタゴニア)がなぜオーガニックコットンにこだわるのかという話を聞く中で、この事実に軽くないショックを受けました。まず第一に、地球全土の農地のうちわずか1%の面積にしかすぎない綿花栽培に、米国の農薬使用量の10%が使用されているという事実に(※)。なぜ、そんなに大量の農薬が??。そして次には、その事実を知らずに毎日どんどん新しい衣料品が作られ、自分たちがそれを購入し、そして廃棄し続けていることを想像して、その循環をまわすことに自分も携わっているんだなぁと、心苦しくなりました。
気になってみて、さっそく綿花栽培についてgoogle先生。
※綿花の栽培面積や農薬の使用量については、資料によって異なるようです。ただ、「えっ、そんなに?!」と驚くレベルであるのは、どれにも共通しています。
なぜそんなにたくさんの農薬が必要なの?
確かに今まで自分が触れてきた綿花というのは、必ずと言ってよいほどあのふわふわな綿ボールにカラッカラに萎れた茶色っぽい茎と葉っぱのようなものがついていました。
てっきり自然乾燥されたものだと思っていたけれど、もしやこれは枯葉剤のせい??
今日のお話では、まだ茎や葉に緑の部分が残っているときにトラクターで一斉収穫をすると、綿の部分に緑の汁がついてしまい商品価値が下がってしまうからとのこと。そのため、枯葉剤で一気に枯らしてしまったあとに刈り取りをするそうです。
なぜ枯葉剤を使うのかといいますと、収穫のときに葉が混ざると品質の悪い綿ということで価格が下がり、農家の収入減になるからです。機械で綿を摘むときに 葉っぱがまだ青々として付いていると濡れ落ち葉になって綿と分離できなくなり,葉ゴミのいっぱいある原綿になってしまうのです。
また自然に葉が枯れるのを待っている間に雹(ひょう)などが降ると、綿花が落ちて収穫できないという大変な事態にもなりかねませんから、時期を見計らって枯葉剤を撒き収穫をするのです。
エコナビさんのサイトにもこのように書かれていました(『エシカルを着る』)。
そして枯葉剤だけでなく、殺虫剤や化学肥料も同じくたくさん使われています。
何が問題?
たくさんの農薬が使われているという事実だけでも、感覚的にイヤだなと思いますが、調べてみると現実的に今の綿花栽培における問題がありました。
- 生産者が受ける健康的被害
- 生産者が受ける経済的被害
- 遺伝子組み換え(GE)綿への切り替えで生まれた悪循環
特にこの被害が大きく見られるのがインドです。世界史を勉強した人は「あ、そういえば」とお気づきかもですが、インドの綿製品はインドの特産品であり世界の交易品としてたびたび登場してきます。古くはインダス文明のころから栽培されていた綿は、17世紀にはイギリス東インド会社の主要輸入品にもなります。しかしその後の産業革命でイギリスが自前で綿製品の生産ができるようになると、今度はインドへ綿製品が逆輸入されるようになり、インドの綿製品の衰退・職人への弾圧が起きます。その結果、ガンジーの糸つむぎで有名なインド独立運動に繋がっていくのですが、これ以上触れると話が脱線しそうなので笑、今回は多くは触れずに、ご興味のある方へご参考までに(『ガンジーの思想について』 豊田千代子)。
改めて、このインドにおいて顕著に見られる、現在の綿花栽培の問題の概略は以下のとおりです。
1.生産者が受ける健康的被害
- 皮膚への直接的ダメージ : 農薬を素手で触ったり、農薬が散布された土壌を裸足で踏む
- 気管や内臓器官へのダメージ : 農薬を散布した際に、呼吸で吸引。また、雨で地下へしみ込んだ農薬を飲料水として摂取。
2.生産者が受ける経済的被害
- 収穫量が落ちる : 大量の農薬により土中の微生物が死に、土地が死ぬ。死んだ土地では作物は育たない。
- 金銭的負担が増える : 土地が死んだため落ちた収穫量を補うため、より多くの化学肥料や農薬で収穫量アップを図る。
- 増える自殺者 : 農薬を買うために借金。貧しいため銀行ではなく高利貸しからの借金で返済に苦しむ生産者。
3.遺伝子組み換え(GE)綿への切り替えから生まれた悪循環
収穫量を上げるために化学肥料や農薬を使用 → 肥えた土地には害虫や雑草も寄ってくる → さらに強力な殺虫剤や、除草のために土地を耕すことが必要 → 費用もかさむし環境にも良くない。土壌や肥料も流出する。
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ここで現れた夢のような種、遺伝子組み換え種。遺伝子内に殺虫成分が組み込まれているため、害虫が寄ってこないので殺虫剤が不要に。そして除草剤によって土地を耕したり重労働が必要がなくなると期待。
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結果は、害虫は減らないし質も落ちた
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さらに遺伝子改良
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雑草も進化
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さらに強力な農薬の散布や人力での除草が必要に。結果、農薬や労働力調達の費用がアップし借金も増えた。しかし、生産量や綿の質は低下。でも既に土地が死んでいるため、化学肥料や農薬漬けの生産方法から逃れられない。遺伝子組み換え種は自家採取できる種をつけないため、新たに種を買わなければ生産もできない。遺伝子組み換え種の生産から逃れられない。
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自殺することでこの状況から逃れる人たちの増加。
この問題と自分の接点とは?
今まで野菜や食品に対しては、その産地や製造過程や材料などを意識して購入していたけれど、正直、綿については特に意識しないで「綿」は「綿」として、それ以上でも以下でもなく触れてきたし購入してきました。確かに“オーガニックコットン”というものの存在は知っていたけれど、どういう意味でオーガニックなのかわかっていなかったし、「普通のコットンよりいい土地で育ててるのかな」ぐらいにしか捉えていませんでした。普通品か良品かという認識。なので、あえてそこまでこだわりを持って良品を選ぶこともしていなかったです。
だけど今回このことを知って、そうではなくて、普通に今自分が手に入れている「綿」は、日本にいる自分たちには「安くて手に入りやすい」という恩恵はもたらしてはくれているけれど、その裏では他の誰かを苦しめていたり、また危険な薬品を大量消費させることももたらしてしまっているのだなたと気づかされました。
と思うと、街のいたるところでたくさんの衣料品が売られ、それがシーズンごとに買い替えられ、売れなければ廃棄される、この状況はなんなんだろうとモヤモヤ。。。
この状況を少しでも変えるために、自分に何ができるのかなとヒントを探してみました。
オーガニックコットンを選ぶということ
さきほど書いた現状の綿栽培の問題点に見られるように、綿の大量生産を可能にすることを目的として、問題の悪循環が生まれています。環境にも生産者にもよくないことは、きっと購入者である自分たちにも、認識はされていなくても何かしらの問題をもたらしていると思うのが自然です。安く大量に手に入れられることの裏にあること。
その悪循環を断ち切るには、その循環を加速させている自分たちの行動を改めることが第一なんだと嫌でも思い知らされます。簡単なことではないけれど。。。。それでも、ひとつの選択肢として知っておきたいのが「オーガニックコットン」です。このオーガニックコットンを選ぶということは、単に購入者・利用者がより安全な素材として手に入れられるということだけでなく、危険な綿栽培を不必要に駆り立てることにブレーキをかけることでもあるということだと考えられます。
こちらのサイト(「どうしてオーガニックコットン?」by Organically)で、オーガニックコットンと普通のコットンの違い、なぜオーガニックコットンを選ぶのかについて、とても見やすく詳しく書かれていますので、気になっていただいた方は、一度ご覧いただければと思います。
私もものを買うときはついつい価格の手ごろさやデザインで選びがちで、どんな素材なのかというところまで意識していませんでした。全ての衣料品でオーガニックコットンを買うということは金銭的にも現状では厳しいですが笑、そういう「いいものを求めています」という意思表示として、買えそうなものはオーガニックコットンを選ぶということを意識していきたいと思います。
?新たに発見した未知?
- 残留農薬の危険性は?
- オーガニックコットンの流通を増やすにはどうしたらいいのか。
- 逆にオーガニックコットンを増やすことで、現状の綿農家の職を失わせることにはならないか。
- 日本国内で栽培されている綿はあるのか。その場合の農薬の使用状況は?
main photo by : Mature cotton field, Cherokee County